「安全」
「安全」は特別な仕事ではなく、毎日の小さな行動から
〜職場の事故を防ぐために、一人ひとりができること〜
職場の安全というと、工場や建設現場など、危険な作業をしている人だけの話だと思うかもしれません。
しかし実際には、転倒、転落、無理な動作、交通事故など、労働災害はさまざまな職場で起こります。オフィスや店舗、医療・介護、運送、サービス業などでも、決して他人事ではありません。
労働災害は長期的には減少傾向にありますが、休業を伴う災害や死亡災害は今も発生しています。死傷災害の主な類型として「転倒」「墜落・転落」「動作の反動・無理な動作」が挙げられます。つまり、日常的な動作や慣れた作業の中にも、事故のきっかけは潜んでいます。
事故は「たまたま」ではなく、いくつもの要因が重なって起こる
職場の事故は、単に「本人が不注意だったから」で片づけられるものではありません。
事故を考えるうえで「スイスチーズモデル」があります。これは、事故にはいくつもの潜在的な要因があり、それらが重なったときに大きな事故につながるという考え方です。
たとえば、次のような小さな要因が重なることがあります。
潜在的な要因:例
環境:床が濡れている、通路が暗い、足元に物がある
設備:機械の表示が見にくい、道具が使いにくい
手順:マニュアルが分かりにくい、作業手順があいまい
人の状態:疲労、焦り、睡眠不足、慣れによる油断
職場風土:危ないと思っても言い出しにくい
このように、事故は一つの原因だけで起こるのではなく、複数の要因が重なって発生します。
だからこそ、事故を防ぐには「気をつけましょう」だけでは不十分で、環境、手順、設備、声かけなどを組み合わせた多重的な対策が大切です。
「ヒヤリ・ハット」は事故を防ぐ大切なサイン
大きな事故の前には、多くの場合、「危なかった」「もう少しでけがをするところだった」という出来事があります。これを「ヒヤリ・ハット」と呼びます。ハインリッヒの法則として、1件の重大災害の背景には29件の軽微な災害、さらに300件のヒヤリ・ハットがあるとされています。
たとえば、次のような経験はありませんか?
ヒヤリ・ハットの例
→放置すると起こり得ること
濡れた床で滑りそうになった
→転倒して骨折する
荷物につまずきそうになった
→転倒・打撲する
急いで階段を降りて足を踏み外しそうになった
→転落する
重い物を無理に持ち上げた
→腰痛や筋損傷を起こす
作業中に声かけがなく接触しそうになった 挟まれ・衝突事故につながる
ヒヤリ・ハットは、失敗を責めるためのものではありません。
むしろ、重大な事故を未然に防ぐための貴重な情報です。
「こんな小さなことを報告してよいのかな」と思う内容こそ、職場全体で共有する価値があります。
ヒューマンエラーは「本人のせい」だけではない
人は誰でも間違えることがあります。
疲れているとき、急いでいるとき、手順が分かりにくいとき、周囲が騒がしいときには、ミスが起こりやすくなります。
ヒューマンエラーは本人だけでなく、作業者を取り巻く要因がうまくかみ合わないときに起こるとされています。そこには、機械・設備、マニュアル、教育訓練、作業環境、同僚や管理者との関係、職場の管理体制などが関係します。
つまり大切なのは、ミスをした人を責めることではなく、「なぜそのミスが起こりやすい状況だったのか」を考えることです。
人に作業を合わせるだけでなく、機械や手順を人に合わせる発想が、安全な職場づくりには欠かせません。
危険予知活動は、作業前の「安全確認」
事故を防ぐための実践的な方法の一つに、危険予知活動、いわゆるKYTがあります。
これは、作業を始める前に「どこに危険があるか」「どうすれば防げるか」を確認し、メンバーで共有する活動です。
資料では、KYTは作業開始前のミーティングだけでなく、作業変更時、中間、終業時、学習の場面などでも行えるとされています。目的は、危険に気づく力を高め、対策を共有することです。
たとえば、作業前に次のように確認します。
危険のポイント:私たちはこうする
床が濡れていて滑るかもしれない:すぐに拭き取り、注意表示を出す
荷物が通路をふさいでいる:通路を確保してから作業する
重い物を一人で持つ可能性がある:複数人で持つ、台車を使う
高い場所で作業する:踏み台や保護具を確認する
声かけ不足で接触する:作業前に合図を決める
このような確認は、数分でできることです。
しかし、その数分が大きな事故を防ぐことにつながります。
今日からできる安全行動
安全な職場づくりのために、一般社員として今日からできることはたくさんあります。
通路や足元を整える
整理・整頓・清掃は、転倒や接触事故を防ぐ基本です。ヒヤリ・ハットを共有する
小さな違和感や危険を見逃さず、職場で共有しましょう。無理な作業をしない
重い物を一人で持たない、急がない、分からないまま進めないことが大切です。作業前に危険を想像する
「何が危ないか」「どう防ぐか」を考えてから行動しましょう。声をかけ合う
安全は一人で守るものではありません。周囲とのコミュニケーションが事故予防につながります。